風邪〜リツコ〜
カチカチカチ
ここはネルフ、リツコの研究室である。
カチカチカチ
モニターを眺めつつ、この世のものとは思えないスピードでキーを打つ。
「・・・・・ずずず・・」
傍らでは遊びに来ていたレイが、その様子を砂糖入りのコーヒーを飲みながら無言で見ていた。
カチカチカチ
「・・・・・ずずずず・・・」
室内にはキーの音とコーヒーをすする音のみ。そんななか・・・・
「はっくしょん・・・・あらやだ」
口に手を持っていきウィルスが飛び散らないようにする。ミサトとは大違い。
カチカチカチ
「・・・ずずずず・・・」
「・・・・はっくしょん・・・」
またクシャミ。
「・・・・風邪ですか?」
「熱は無いみたいだけど」
自分で額に手をあて温度をはかる。
「はっくしょん」
間を置かずにまたクシャミ、レイはコーヒーカップをテーブルに置くとリツコに近寄った。
「安静にしないと」
レイはリツコの腕を取り、仮眠室につれて行こうとする。
「いいわよ。このくらい平気よ」
「ダメ」
レイは心配した瞳でリツコを見つめた。リツコはレイの心配の顔に一息つくと渋々承知する。
「わかったよ。行きましょうか」
「はい」
自分を心配してくれるレイにほほ笑みかけ、手を引かれて仮眠室に向かう。
「これを来てください」
渡されたのはシルクのパジャマ、職権乱用で買ったものである。
「はいはい」
「寝てください」
「はいはい」
素直に従うリツコ。レイは布団をかけると部屋を出て行った。
(ふう〜、風邪で休むなんて何年ぶりかしら?)
天井を見つめ、今までの生活を思い出していた。ネルフに入ってから忙しくて病気をしても仕事をしていた。どんなに体調が悪くても休む事なんてなかった。
「はい」
レイは洗面器を持って戻ってくると、タオルを絞り額に乗せた。
「ふふ、ありがとう」
「寝てくださいね」
「わかったわ。おやすみね」
「おやすみなさい」
瞳を閉じ疲れを取る。レイはそれを確認すると静かに部屋を出た。
「う、う〜〜ん・・・・」
何時間眠っただろうか?すっかり体も元気になりベットから出る。すると台所から良い香りがしてきた。
「何かしら?」
濡れタオルを洗面器に置くと、香りの正体を確かめる為に台所に向かう。
「あら?レイ」
そこにはエプロンを着けたレイが調理をしていた。
「ダメ、寝てないと」
背中を押し、ベットに戻そうとするがリツコはもう治っている。
「もういいわ大丈夫よ。治ったから」
「本当?」
「本当よ」
微笑むリツコ、親子である。
「それじゃあリビングで待っていてください。おかゆができましたから」
「はいはい、わかりました」
「はい」
お盆に湯気がたちのぼり熱々のおかゆを持ってやって来た。
「美味しそうね。いただきます」
「はい」
リツコは冷ましながらおかゆを口に運ぶ。
もぐもぐもぐ
「美味しいわ!レイ、お料理上手ね」
「・・・はい」
誉められ照れくさそうに顔を赤らめるレイ。
「碇クンに教わったの」
シンジの事を考え頬が桜色に染まる。
「シンジ君に教わったの。それにしても美味しいわ」
「はい」
ほほ笑みあう二人。そして薬を飲み一息つく。
「ふう〜おかげで良くなったわ。ありがとうレイ」
「お、お母さんの為だから・・・・」
ピキッ
その一言にリツコは固まる。そしてレイの頭をポンと軽く叩いた。
「お姉さんでしょ」
その日二人には笑顔が絶えなかったのであった。
このSSはよしはらさんのリクエストで描きました。レイ編とは逆構図、レイが看病をしましたがどうでしたか?
レイはリツコをお母さんと思っていますが、リツコはそうは思っていません、姉妹と思っています(無理があるかな^^;)
風邪〜レイ〜の後書きで書きましたが、二人を描くとどうしても親子になってしまいます。ほのぼの〜
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 風邪〜リツコ〜